
1、急性期の症状
(1)頚部痛・頚部不快感が多い。
交通事故の事故形態(衝突方向・速度・事故予測の有無・ヘッドレストの位置・頭部回旋の有無等)受傷者の頸椎の状態(筋緊張の有無・頚椎症性変化の有無、椎間板膨張の有無等)など多くの要因が関連して傷害が発生していると考えられます。
(2)自然寛解
急性期の症状は自然に寛解していく。
平均治癒期間は73日。「3カ月」での治癒率は、70パーセントとの報告があります。
2、慢性期の症状
(1)頚部痛
むち打ち損傷にもっとも多い症状であり、慢性化したむち打ち損傷患者の97%に頚部痛が存在するとの報告があります。
疼痛発生部位としては、椎間関節、椎間板、頚部の靭帯、筋、筋膜などがあげられ、発症の原因としては、椎間関節での滑膜炎、滑膜のインピンジ、頚部神経根後枝の刺激症状あるいは前庭機能障害からくる前庭頚反射の異常、頚部筋の緊張、線維筋痛症などがあります。
(2)頭痛
頚部痛に続いて多い症状であり、慢性化したむち打ち損傷患者の78%に頭痛が存在するとの報告があります。
(3)めまい
むち打ち損傷後、めまいが生じることもあり、23%出現するとの報告もあります。
(4)頭部、顔面領域のしびれ
上位頚椎、頚髄の病変によって、顔面を囲むような分布の感覚傷害が生じることもあります。
(5)眼症状
眼痛、眼球運動傷害、視力障害、眼瞼下垂などがあります。
(6)耳鳴り、難聴
7%で耳鳴りが発症するとの報告もある。
(7)吐き気、嘔吐
(8)四肢症状
むち打ち損傷の43%で上肢のしびれ感があるとの報告があります。
(9)腰痛
(10)自律神経症状
心因性の影響が指摘されています。
(11)認識障害
不眠、集中力低下、易疲労性、微熱感、記銘力低下などの症状を示すことがあります。
(12)うつ状態
(13)全身知覚過敏
3、むち打ち損傷の検査
(1)診察 ①問診 ②視診 ③触診
(2)検査
①関節可動域
頚椎については、屈曲、伸展、回旋、側屈、の可動域が測定される。
②筋力
筋力を測定し、神経障害部位を診断する。
③反射
深部腱反射、表在反射、病的反射(ホフマン反射・トレムナ―反射・バンビンスキー反射)
④神経根症状誘発テスト
スパークリングテスト、ジャクソンテスト
⑤胸郭出口症候群誘発テスト
アドソンテスト、ライトテスト、エデンテスト、モーレーテスト、ルーステスト
⑥腰部神経誘発テスト
ラセーグテスト、SLRテスト、FNSテスト
(3)画像検査
①単純レントゲン
②MRI
4、むち打ち損傷の治療
ケベックガイドライン→
症状をgrade0から4までの5段階に分け、その重症度に応じて治療法を選択し、治療法と治療期間を標準化することを目的としている。
(1)安静
一般的に、休養はなるべく1~2週間以内にして、急性期が過ぎた場合は、可及的早期に日常生活に復帰し、すこしづつ体を動かしながら治療した方がよいとされます。
(2)頚椎固定
軽傷の患者には不要で、四肢に強い神経症状が発生しているか、頚椎の靭帯組織に障害があると診断されたときや疼痛のために頚部の保持ができない場合にのみ処方すべきです。
(3)薬物療法
ケベックガイドラインでは、grade1には薬の処方は不要、grade2・3に対して鎮痛剤や消炎剤の1週間以内の服用を勧め、grade3の急性期に、除痛目的で麻薬性鎮痛剤が必要とされている。
(4)ブロック療法
疼痛が強い場合、用いられる。
(5)理学療法
①頚椎牽引
②温熱療法
③電気療法
(6)運動療法
(7)手術療法