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後遺障害に関する問題

1、後遺障害

①頚椎の脱臼や骨折などの骨傷や頚髄損傷を伴わない外傷性頚部症候群(頚椎捻挫・頚部挫傷)については、将来においても、回復が見込めない症状であることを医学的に証明・説明できる場合には、「神経系統の機能又は精神」の障害として評価します。
なお、外傷に起因する心因的反応による症状は、精神医学的治療をもってしても治癒しなかったものについては、「外傷性神経症」として外傷性頚部症候群とは異なる評価をします。

②後遺障害等級表における評価
 12級13号→局部に頑固な神経症状を残すもの
 14級9号→局部に神経症状を残すもの

外傷性頚部症候群の後遺障害は以前から14級9号と12級13号の選択となっています。

「局部に頑固な神経症状を残すもの」
外傷性頚部症候群に起因する頭頚部や上肢、背部に残存する症状が、神経学的検査所見や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明しうるものがこれにあたります。

「局部に神経症状を残すもの」
外傷性頚部症候群に起因する症状が、神経学的検査所見や画像所見などから証明することはできないが、受傷時の状態や治療経過などから連続性・一貫性が認められ説明可能な症状であり、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるものがこれに該当します。

③後遺障害認定基準
症状の存在を医学的に証明可能か、受傷時の状態・治療の経過などからその妥当性が判断できるか。
この2つを前提に等級認定を行います。

④5つの分類
T捻挫型
 頚部に過伸展や過屈曲が発生したとしても、その程度が軽ければ、頚部を包み込んでいる筋肉や靭帯の軟部組織の部分断裂などの傷害で止まるものが大半です。初期の主たる症状は、頚部痛と頚部運動制限です。
これが、外傷性頚部症候群全体の70%近くを構成しているのですが、受傷後3カ月以内に後遺障害を残すことなく治癒することが予想され、軟部組織の炎症に止まるものは、後遺障害の対象となりません。

U神経根症型
 脊髄から枝分かれした抹消神経である、神経根に傷害を残すもの。
左右の頚椎神経根はそれぞれの上肢を支配領域としており、神経根症型では、頚部痛、頚部運動制限に加えて、左右いずれかの肩~手指にかけて重さ感、だるさ感、痛み、などの症状を訴えます。
これらは、むち打ちの神経症状として後遺障害の対象になります。

Vバレ・リュー型
 交感神経の損傷を原因とする自律神経失調症状を示すもの。
頚部には交感神経節=星状神経節が走行し椎骨動脈の血流をコントロールする役目を担っています。
この交感神経節が損傷すると、倦怠感、疲労感、熱感、不眠、脱力感、めまい、耳鳴り、眼精疲労、視力調節障害、頭痛、動悸、息切れ、食欲不振、腹痛、など自律神経失調症を発症することがあり、これをバレ・リュー症候群と呼んでいます。

W神経根症型とバレ・リュー型の混合

X脊髄症型、脊髄症状を示すもの

後遺障害逸失利益
症状固定日以降の就労制限に基づく所得喪失が後遺障害逸失利益として把握されます。

後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料の算定においては、後遺障害等級に応じて、金額を認定する方法がとられており、その基準を示したものとして「赤い本」などの損害賠償算定基準であり、後遺障害等級ごとに金額が示されています。
後遺障害慰謝料の検討においても、被害者に残った後遺障害が何級に格付けされるのかが重要となります。

2、自賠責保険における後遺障害認定

むち打ち損傷によって残存した症状が、12級に認定されるか、14級に認定されるか、あるいは非該当とされるかの区別は実務上の関心事です。
もっとも、一定の条件が整えば12級あるいは14級となるという明確な要件や条件関係は確立していません。
例えば、12級は「通常の労務に服することができ職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」、および14級は12級より軽度のものが該当します。

3、裁判例の傾向

①非該当となる場合
画像所見も、神経学的検査所見も認められず、自覚症状のみにとどまる場合、非該当となりやすいです。

②12級が認定される場合
神経根症状型については、画像から神経圧迫の可能性が考えられ、かつ圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された場合には、医学的証明があったとされやすく、12級と認定される傾向にあります。

画像では、Xp,CT,MRIによって神経圧迫の存在が認められるかどうかをみることになります。例えば外傷性ヘルニアと認められ、そのヘルニアによる神経根圧迫が認められたような場合です。もっとも、画像から認められる神経圧迫と受傷によって出現したしびれ等の部位が当該神経の支配領域に合致している必要があり、この点の確認が重要です。

神経学的検査には、様々なものがあり、他覚性や客観性については一定の限界があります。

B14級に認定される場合 14級に認定されるのは、症状について医学的な証明まではできないが、医学的な説明ができる場合、あるいは自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定される場合ですが、これには様々なものがあります。

神経根症状型については、画像所見は明らかな神経根圧迫等は認められないが、頚椎椎間板の膨隆等神経圧迫を示唆する程度の画像所見があり、かつ神経学的検査所見において神経所見を示す所見があれば、おおむね14級と認定されやすいでしょう。ただし、この程度の所見が揃ったときに必ず14級が認定されるわけでもありません。

4、労働能力喪失率

むち打ち損傷について、裁判例では、12級では14%、14級では5%と認定するものがほとんどです。おおむね後遺障害等級表とおりの労働能力喪失率を認定しています。

5、労働能力喪失期間

むち打ち症の場合は、12級で5年から10年程度、14級で5年以下に制限する例が多く見られます。

休業に関する問題

1、問題の所在

むち打ち損傷において、過去の得べかりし利益(休業損害)をどのように考えるか問題となります。
職種にもよりますが、むち打ち損傷により、そもそも休業する必要があるのか、休業する必要があるにしても、入通院期間と治療内容から休業期間をどのように認定すべきかが実務では問題となることが多いです。

2、入院期間の休業

一般的には、事故により入院せざるを得ない場合には、入院期間中は休業の必要性が認められるといえます。
ただし、むち打ち損傷において、入院の必要性が認められる場合はそれほど多くないので、具体的症状、治療内容、入院中の外出や外泊の頻度等被害者の行動等により、現に入院していても、入院の必要性が否定されることもあります。
したがって、入院期間=休業期間と安易に考えてはいけません。

3、通院期間中の休業

症状固定までの通院期間中、実際に通院治療した日は休業を余儀なくされるが、通院治療しなかった日についても、一定程度休業の必要性を認めるべきでしょうか。
医師が休業を指示することもありますが、同じ程度のむち打ち損傷でも、年齢、職種によって休業の必要性が異なります。
よって休業の必要性を一律に判断できず、個別に判断せざるを得ないでしょう。

4、収入の減少の必要性

有給休暇を使用した場合、専業主婦の場合、第三者に業務を委託した場合等を除けば、収入減少がなければ、そもそも休業損害は認められません。

現実に収入減少が発生していてもその全額を認めるのではなく、休業の必要性、及び相当性を公平の観点から制限した判例もあります。

なお、休業補償の対象となりえる期間は症状固定日までであり、症状固定日以降は後遺障害が認定されかつ労働能力喪失が認められれば逸失利益の対象となります。

5、相当な休業期間と労働能力喪失割合

休業さえしていれば、常に症状固定日まで休業損害が認められるわけではありません。休業損害は休業の必要性、相当性が認められるものに限られます。
また、症状固定日まで休業期間を認めた場合でも、段階的な割合を用いて休業損害を認めた裁判例も多いです(例えば、受傷後10日は100%、その後15日は50%という割合的認定)。

6、近時の裁判例

(1)事務系給与所得者
 症状固定までの期間が長期化しても、1ないし6カ月程度を休業日数と認定している裁判例が多く、割合的認定は少ないです。
これは、給与所得者の場合、多少の痛みやしびれがあっても就業することが可能であり、就業した以上、たとえ業務の能率が落ちても、このような能率低下については具体的損害を認定することが困難なため、割合的認定が難しいからでしょう。
なお実務では、通院のため有給休暇を使用した場合は、減収がなくても休業損害を認めています。

(2)主婦
 主婦については、症状固定までの期間を休業日数と認めても割合的認定がなされているか、症状固定までの期間の25%ないし50%の休業日数を認めたにすぎない例も多いです。
主婦については、症状固定までの期間を100パーセント休業が必要な期間とは認定しない方向性が見て取れます。
これは、家事一般についてみると、しびれや痛みが残存している場合には、家事を行う効率が落ちたり、時間がかかったりすることが認められるものの、全く家事を行うことができない場合が少ないことから、割合的認定になじむからでしょう。

(3)自営業者等
 症状固定までの期間が長期化している場合には、そのすべてを休業期間と認定しても、割合的認定がされる例が多いです。
これらは、むち打ち損傷の痛みやしびれが職業遂行に及ぼす影響、治療方法等も考慮されているものと推測されます。
自営業者等は、給与所得者と異なり、休業(あるいは通院治療)がそのまま収入源に結びつくことが多いため、割合的任意になじみやすい傾向があると思われます。


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